話題の「ナチュラリスティック・ガーデン」とは、結局どんな庭のこと? 「ナチュラルガーデン」とどう違う?【『趣味の園芸』10月号より】

2023/10/21

『趣味の園芸』2023年10月号では、新しい庭のスタイルとして今注目を集めている「ナチュラリスティック・ガーデン」について特集を組んでいます。

最近、ときどき耳にするようになった「ナチュラリスティック・ガーデン」。「なんとなくはイメージできるけれど、じつはよくわからない」という方も多いのではないでしょうか。

「ナチュラルガーデンとは違うの?」「ローメンテナンスって本当?」「宿根草のガーデンじゃないの?」

ナチュラリスティック・ガーデンについて、よみうりランド HANA・BIYORIの「Piet Oudolf Garden Tokyo」のヘッドガーデナー・永村裕子さんに教えてもらいました。

「ナチュラリスティック・ガーデン」と「ナチュラルガーデン」

——「ナチュラルガーデン」という言葉もよく目にするのですが、違うものなのでしょうか。「ナチュラリスティック・ガーデン」とはどんな庭のことなのでしょう。

オーガニック、雑草放任主義、自然風、自生種での庭づくり、ビオトープなど、さまざまなものが「ナチュラルガーデン」と呼ばれている印象です。

「ナチュラリスティック・ガーデン」は、植物本来の姿でつくる景観と四季の展開を動画のように堪能する、ひとつの確立されたジャンルといえます。新・宿根草主義(New Perennial Movement)とも呼ばれます。施肥や消毒、誘引など管理の難しいバラなどの園芸植物中心の庭や、植物のコレクションのような庭と対照的に、より丈夫な宿根草やグラスを、品種を絞ってふんだんに使います。

牧草地の花畑を模したような「マトリックス植栽」と、一種類の植物をまとめた塊(ブロック)を2~30種類ほどキリンの柄のように散らして展開する「ブロック植栽」と大きく2種類あります。

——「動画のように」という表現が印象的です。

とにかく華やかに、花盛りのその瞬間を絵のように楽しむガーデンもありますし、一方で、ありのままの自然に近いようなコンセプトのガーデンもありますよね。ナチュラリスティック・ガーデンは、その間に位置する庭づくりだと私は考えています。美しさを大事にしつつ、春・夏・秋・冬、四季の移ろいに合わせて植物が見せる姿の変化を、静止画ではなく、時間の経過という要素も含めた4次元展開で楽しむ、という醍醐味があります。

「宿根草のガーデンとは違うの?」「ローメンテナンスって本当?」

——「宿根草のガーデン」とイコールではないのでしょうか。

「芽出しから枯れ姿まで、植物の一生を堪能する」というコンセプトなので、結果的に主に宿根草のガーデンとなりますが、ときに樹木や一年草が使われる場合もあります。宿根草が小さいうちは一年草を足したり、芽吹きの景色を賑わすために春咲き球根を加えたりすることも。いずれにしろ、初春に一気に刈り取る作業の妨げにならない範囲で臨機応変に加味します。

——ローメンテナンスでサステナブル、という言葉とセットで出てくることも多いのですが、本当にそうなのでしょうか。

正直なところ、美しいガーデンはガーデナーの努力の賜物であって、プロが引き受けているガーデンで「ローメンテナンス」はなかなか現実的ではなかったりもしますが......。

それでも、3年ほどするとガーデンとして自立してきて、1年目、2年目に比べると手がかからない部分も出てきたりします。ただ、ローメンテナンスを「目的」とした植栽ではありません。

オランダのガーデンデザイナー、ピート・アウドルフ

——「ナチュラリスティック・ガーデン」を語るうえで必ずといっていいほど登場するのがPiet Oudolf(ピート・アウドルフ)氏ですよね。

彼がナチュラリスティック・ガーデンを発明した、というわけではなく、はじめは1990年代以降の自然主義植栽のムーブメントのなかにいたガーデナーの一人でした。やがてシカゴのルーリーガーデンや、ニューヨークのハイラインのプロジェクトを通して、独特のセンスで世界中を魅了していきました。彼のリラックスした雰囲気の植栽が、アメリカの人々の心を掴んだのが大きかったように思います。

よみうりランドでは、アジア初のPiet Oudolf氏デザインのガーデンが2年目を迎えています。ぜひ足を運んでいただければと思います。

アメリカ・シカゴの「ミレニアム・パーク」内にあるルーリーガーデン。Piet Oudolfが世界でブレイクするきっかけとなった。

アメリカ・シカゴの「ミレニアム・パーク」内にあるルーリーガーデン。Piet Oudolfが世界でブレイクするきっかけとなった。

Piet Oudolf(ピート・アウドルフ)
1944年、オランダ生まれ。1982年に東オランダの⼩さな村フメロで妻とともにナーセリーをオープン。ガーデン・ランドスケープデザイナーとしてその名を広めることになる。『Planting the Natural Garden』など著書多数。2017年にはドキュメンタリー映画「FIVE SEASONS」が制作・公開され、その半生に注目が集まった。

Piet Oudolf氏がデザインしたガーデンが東京でも見られる。写真は7月の様子。 (撮影/河内彩)

Piet Oudolf氏がデザインしたガーデンが東京でも見られる。写真は7月の様子。 (撮影/河内彩)

永村 裕子(ながむら・ゆうこ)

景観デザイナー。英国でベス・チャトー氏に師事。ヨーロッパや中東の造園設計事務所に勤務。現在は熊本市を拠点に植栽デザインと管理を実践しながら、海外でのコンテスト植栽も請け負う。

◆『趣味の園芸』2023年10月号「ピート・アウドルフとは何者か。」より抜粋・加筆。

「みんなの趣味の園芸」で10月号の内容を見る

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