レシピなしでもおいしいカレーが作れる! 著書70冊超の“カレーの人”水野仁輔さん考案「システムカレー学」その1

 おいしいカレーを作るために最も重要なことは、何でしょうか?
『スパイスマジックでつくるカレーの法則』『水野仁輔 カレーの教科書』(NHK出版)をはじめ、カレーに関する著書が70冊を超える“カレーの人”水野仁輔さんは、「できあがりのゴールイメージをできるだけ具体的に持つこと」と断言します。

 水野さんは、「なぜおいしくなったのか」「何をしたらどうなるのか」「そのためには何をすればいいのか」を問い続け、『水野仁輔 カレーの教科書』刊行から10年を経たいま、ついにレシピに頼らず思い通りのカレーを作るためのメソッド「システムカレー学」を確立しました。

 今回は、水野さんの著書『水野仁輔 システムカレー学』から、カレーの構造を理解するための普遍的な手順を7つのステップに整理した「ゴールデンルール」を紹介します。

※本記事は、デジタルマガジン用に編集しています。

カレーにおける「ゴールデンルール」とは?

 すべてのカレーのおいしさを決定づけるたったひとつのルールが「ゴールデンルール(GR)」。このルールに従って鍋に材料を投入し、加熱を続ければおいしいカレーができあがる。作り方をいくつも覚えなくていい。ゴールデンルールさえ頭に入っていれば、空振りもファウルもなく、ヒットを飛ばし続けられる。

たったひとつのルールがあった

 ゴールデンルールは、7つのステップで構成されている。そして、すべてのステップには狙いがある。何が目的なのかハッキリしているから、調理という行為が惰性ではなく有意義になるのだ。

 あるカレーを作ろうとしたとき、すべての動きには意味があるはずだ。なぜそれをするのか? なぜその食材を選ぶのか? なぜそのタイミングで加えるのか? なぜ炒めるのか? なぜ煮るのか? すべてに答えを見出したとき、根本的な問いに対する答えがわかった。すなわち、なぜカレーはおいしいのか?

 開発の出発点は、インドのカレーだった。スパイスを使ってカレーを作るという点でインド料理は原点。そこにすべてのカレーに共通する要素を見つけ出した。多くのインドカレーが同じような手順で作られていることに着目し、それぞれの手順に意味を見出す。それはカレーを解明する作業だったのだ。

狙いを持って調理する

 各手順に狙いを持つことが大切。そうすれば抜群の効果を発揮してくれるのがカレー調理だ。

1. はじめの香り 主にドライのホールスパイスを加え、縁の下の力持ち的な役割で穏やかに香りを添える。
2. ベースの風味 玉ねぎやにんにく、しょうがを加えて、カレーの土台となる味や香り(風味)を生み出す。
3. うま味 トマトやヨーグルトなどを加えて、決して目立ちはしないものの、全体のおいしさを底上げする。
4. 中心の香り 主にドライのパウダースパイスを加えて、カレーの方向性を決めるような印象深い香りを残す。
5. 水分 水をはじめ各種液体分を加えて、「煮る」調理を通して全体の調和と加熱を促進させる。
6.  肉や野菜、魚介類など、主役を演じる食材を加えて、そのカレーの正体を決定づける。
7. 仕上げの香り フレッシュスパイス(ハーブ)、ドライスパイスなど様々なアイテムを加え、香りのあしらいをする。

 香り(1、4、7)と味(2、3、5、6)を交互に加えていくイメージ。こうすることで、香りと味が重層的に積み重なり、カレー全体のおいしさがアップする(下記の「ゴールデンルール(GR)による基本のチキンカレー工程図」参照)。
 加熱調理の種類としては、前半(1~4)で炒め、後半(5~7)で煮る。ここにも意味がある。炒めるときに起きているのは、「脱水」と「メイラード反応」。煮るときに起きているのは、「抽出」と「調和」である。それぞれの目的を整理しよう。

ゴールデンルール(GR)による基本のチキンカレー工程図。システムカレー学の出発点だ

ゴールデンルール(GR)による基本のチキンカレー工程図。システムカレー学の出発点だ