
奈良県音羽山の中腹にある尼寺で、お寺を30年以上守り続けるご住職の後藤密榮さん。豊かな自然に囲まれた暮らしの中で、どんな食材も知恵と工夫でおいしくしてしまう料理名人でもあります。本記事では『やまと尼寺 精進日記2 ふたたびの年』より、暑さを乗り切る暮らしの知恵と、夏野菜のたのしみ方を公開します。夏真っ盛りの8月、ご住職たちは旬の野菜から元気をもらっていました。
“音羽流”暮らしの知恵
いつも笑い声が絶えないお寺の3人。庭仕事も、山仕事も身軽に動き回る姿が印象的です。その元気ハツラツの秘訣は何でしょうか。お寺の暮らしの中に、そのヒントがありました。

朝のはじまりはラジオ体操から。本堂の前で3人そろってするのが日課です。ラジオ放送に合わせて、毎日おなじ6時半から。宿坊のお客さんがいるときは、いっしょにどうですか? と声をかけます。これは、ご住職が15年ほど前にむち打ちで入院したことをきっかけに始めた、体力作りの一環。以来、ずっと続けいているそうです。

旬のものをおいしく食べる
お寺の食事は里からいただいた野菜や、庭で摘んだ野草が中心。果物もたくさんいただきます。瑞々しい旬の食材ばかりです。
「水分を多く含んだ夏野菜は体内にこもった熱を冷まし、日中は過ごしやすく、夜も涼しく寝られる。」とご住職。冬の根菜は体を内側から温めてくれるそう。
子どものころから食べることも料理することも好きで、お母さんの真似ごとをして自分の畑を作っていたというご住職。野菜をよく知ればこそ、おいしく食べるアイデアが湧いてくるのかも。
夏野菜のたのしみ

夏真っ盛りの8月、音羽山のふもとに住む潤子さんが畑で収穫したゴーヤと万願寺唐辛子を届けてくれました。慈瞳さんの実家からは、とうもろこしがどっさり。色鮮やかな野菜をずらりと並べて、夏野菜のうま味をたのしむ一品を作ります。
夏野菜は、体に不足しがちなカリウムやビタミンなどの栄養素を補い、ほてりをしずめてくれる有能な食材。旬の野菜にひと手間加えて、あっさり、食べやすく。たっぷり食べることが夏バテせずに元気に過ごす秘訣です。

左上から時計回りに、葛餅、揚げ浸し、とうもろこしのかき揚げ、きゅうりの冷や汁、とうもろこしごはんなど
夏野菜の揚げ浸し 作り方
材料
ゴーヤ、大和なす、たまねぎ、ミニトマト、オクラ、万願寺唐辛子、いんげん、かぼちゃなどの野菜 適量
濃いめの麺つゆ 適量
- 1
野菜は大きめに切る。かぼちゃは1cmの厚さに。いんげんはすじをとり、半分の長さに切る。大和なす、たまねぎは8等分のくし切りにする。トマト、オクラ、万願寺唐辛子は油がはねないよう切り込みを入れる。
- 2
1の野菜の水気をよく切り、170℃くらいの油で素揚げにする。火が通りにくいかぼちゃ、なすは2分ほど、ほかの野菜は1分ほど揚げる。
- 3
野菜が熱いうちに濃いめの麺つゆに浸す。冷蔵庫で数時間冷やすと味が染み込み、おいしく食べられる。
とうもろこしごはん 作り方
材料(5人分)
米 3合
とうもろこし 2本
塩 少々
- 1
とうもろこしの実をはずす。まず縦1列を包丁を使ってはずすと、残りは手だけで簡単にはずせる。
- 2
米を研いで3合の目盛りまで水を加え、30分浸水させる。1と塩を加えて炊飯器で炊く。
「やまと尼寺」とは?
奈良の尼寺、音羽山観音寺を舞台に、ご住職である後藤密榮さんの暮らしぶりやお寺の行事、ご住職を中心につながる人びとの姿をに紹介するシリーズ。書籍『やまと尼寺 精進日記』では、季節の移ろいを感じながら、お勤めと行事を大切にする日常を写真とイラストを交えながらお届けします。

『やまと尼寺 精進日記』シリーズ

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