2020年度に必修化された小学校での英語教育。「子どもが英語に興味を持たない」「楽しく学習するためにはどうすればいいの?」という悩みを抱えるお父さん、お母さんも多いようです。そんな保護者の方に向けて、『小学生の基礎英語』の人気連載「10代の英語ロードマップ」では英語指導のスペシャリスト、関正生先生が小学生が英語を学ぶコツを教えてくださっています。その中から今回は8月号掲載の「英文法に興味をもたせるコツ」をお届けします。 関正生(せき・まさお)
埼玉県立浦和高校、慶應義塾大学文学部卒業。オンライン予備校「スタディサプリ」講師。TOEIC®L&Rテスト990 点満点取得。全国の小中高生・大学生・社会人など、受講者は年間140 万人にのぼる。著書は『小学校6年生の英語が1冊でしっかりわかる本』、『子どもの英語力は家で伸ばす』(以上かんき出版)、『サバイバル英文法』、『サバイバル英文読解』『サバイバル英会話』(以上 NHK 出版)、『真・英文法大全』、『改訂版 世界一わかりやすい英検準2級に合格する授業』(以上KADOKAWA)、『東大英語の核心』(研究社)など120冊を超える。25年以上にわたり、英語を学習する全世代に絶大な影響を与えている。

「英文法の有用性」は伝わりにくい  英文法に取り組ませることは、英単語などに取り組ませるよりもずっと大変です。というのは、小学校の英語の授業では、英文法で困ることはほとんどないからです。英文法の試験があるわけではありませんし、会話表現を中心に学ぶので、全部覚えれば乗り切れてしまいます。英文法の有用性がわからない状態で、いきなり「英文法」などという、よくわからない英語の分解・分析に興味を持つことは、普通はないでしょう。まして小学校英語で出てくる会話表現には、文法の理論から見れば破壊的な形をしていることもあります。
 たとえばThank you.は主語のIが省略されていますし、「thankの現在形は今発話している行為(感謝する)が発話そのもの(ありがとう)になる」という、大人が聞いてもイヤになる話になってしまいます。こんな段階で英文法を持ち出したところで「役に立たない、面倒くさい」 と思われるのは当然ですね。
困ったときこそ英文法が身に染みる  では、そんな中、小学生が英文法に興味を持つのはどんなときなのでしょうか? 一言でまとめれば「暗記英語で困ったとき」です。「困ったとき」をさらに具体的に言えば、たとえば以下のようなときが挙げられます。 □ 暗記モノを覚えられずに苦戦しているとき
□ 似た表現で、その区別がわからないとき
□ 「なんでそうなるのか?」という疑問が出たとき
□ ミスをしたとき・そのミスで恥をかいたとき
□ 英検などのテストで悪い結果が出たとき
 こういったときに、「英文法を使って解決できた」ということがあれば、ひとつの成功体験となり、英文法の有用性が身に染みてわかるでしょう。 「“may” で困ること」とは?  ここで、助動詞mayを例に、どう身に染みるのかをお話しいたします。
 小学生のうちは、May I 〜 ?「〜してもいいですか?」が出てくる程度かもしれません。これだけなら、「そういう言い方なんだ」と暗記したほうが早く、ここでいちいち「mayは助動詞でね……」という説明は煩わしいものに思われるでしょう。ただ、学習が進めばいずれは「mayには2つの意味がある」 という内容を習得する必要が出てきます。

▼mayの2つの意味
1)許可「〜してもよい」
2)推量「〜かもしれない」

 ここで、ひっかかるところが2つ出てきます。1つめは「2つも意味を覚えなくてはならない。しかもその2つの意味が関連しているようには思えない」というものです。ただし、真面目な子や英語が 好きな子はその程度の暗記を嫌がりません。でもその場合も、2つめのひっかかりがあるのです。それは「〜かもしれない」と言うときに、「どれくらいの『かも』なのかわからず、適切に使えない」というものです。お子さん自身がこのことを自覚していることは少ないので、以下のことを伝えて問題提起をするといいでしょう。

日本語の日常会話で「〜かもしれない」は可能性が何パーセントのときでも使える。たとえば、「雨が降るかも」は90%の確率でも、30%の確率でも使える。でもmayはどうなんだろうね?

 言ってみれば意図的に困らせるわけですが、うまくやれば効果抜群です。
 さて、1つめの理由であっても、2つめの理由であっても、お子さんが「困った」のなら、そこで英文法の出番です。
may は「50%」の感覚  「may は50%半々の感覚」であることを意識することが大切です。

▼mayの意味→核心:50%半々
1)許可「〜してもよい」 ※オススメ度「50%」
You may take this guidebook home if you want.
(もしよろしければ[もし欲しいのなら]、このガイドブックを家に持ち帰ってもいいですよ。)
2)推量「〜かもしれない」 ※予想「50%」
It may or may not be true.
(それは本当かもしれないし、本当じゃないかもしれない。)

 オススメ度が50%なら「〜してもよい(でも、しなくてもよい)」となり(そこから「許可を与える」 という意味が生まれます)、予想が50%なら「〜かもしれない(でも、そうじゃないかもしれない)」 となるのだという、may の「根っこ」にあたる部分が大事なのです。
 もちろん言葉なので、ピッタリ50%である必要はなく、60%でも、そもそも数字でうまく表現できなくてもOKです。あくまで「目安」として「50%半々」だと理解しておくと、英文の本当の意味がリアルに伝わってくることがよくあります。 「2つも意味を覚えなくてはならない」と悩む子には「どちらも50%の感覚で……」と2つの訳語に関連を持たせてあげればOKで、「どれくらいの『かも』 なのかわからない」という子には「そうかもしれない(でもそうじゃないかもしれない)」という感覚のときにmayを使うと教えてあげれば、悩みが解決します。

 もちろん、ここで紹介したようなことを保護者の方が常に考える必要はありません。30年近く、英語そのものだけでなく、教え方・伝え方をずっと考えている僕の授業を再現しただけで、この中からお子さんに合いそうなものを取捨選択していただければいいだけです。お子さんの「困ったとき」を見計らってトライしてみてください。
テキストではこのように学べます! ■NHKテキスト 小学生の基礎英語 2022年8月号より
■イラスト:山内庸資


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