『12か月栽培ナビNEO 観葉植物 ビカクシダ』が増刷決定!! 杉山拓巳さんインタビュー ~ビカクシダはどんどん面白くなる!

ビカクシダが今、すごいことになっています。ユニークでダイナミックなフォルムからグリーンインテリアに欠かせない植物として近年注目されているビカクシダですが、その人気はとどまるところを知りません。8月18日に発売したばかりの『12か月栽培ナビNEO 観葉植物 ビカクシダ』(NHK出版)もおかげさまで3刷が決定! そこで今回、多肉植物のファンも注目するビカクシダの歴史や今後について、育種にも造詣の深い杉山拓巳さんにお聞きしました。

コウモリランからビカクシダへ

 最近のビカクシダ人気はすさまじいですね。2000年代までビカクシダは一部のマニアのものでしたから、隔世の感があります。
 ビカクシダはコウモリランとも呼ばれますが、ラン科に属するわけではなく、シダの仲間(ウラボシ科ビカクシダ属)です。昭和40年ごろからランの生産者が栽培量をふやして一般に知られるようになりました。当時ランは高級な植物というイメージがあったため、「○○ラン」と名づければ注目されるだろうと考えたのでしょう。コウモリの翼のような形の葉をもつ希少なもの(ラン)という意味合いを込めて命名され、以来、長い間コウモリランという名前で流通してきました。
 ところが2010年ごろから若い人たちを中心にSNSで人気に火がついて、それに伴ってビカクシダという和名も知られるようになりました。今ではすっかり定着した感じがしますね。

'ミスター・スーダン' 。原種(ウィリンキー)と比べると胞子葉の分岐が多く切れ込みが深い。栽培難易度は 普通。

'ミスター・スーダン' 。原種(ウィリンキー)と比べると胞子葉の分岐が多く切れ込みが深い。栽培難易度は 普通。

着生させた姿のかっこよさ

 さらに人気に拍車がかかったのは2014年ごろからです。ファッション業界、美容業界など、それまでの植物愛好家とは異なる人たちが、多肉植物や塊根植物、熱帯植物に目を向けた影響が大きかったと思います。彼らは飾り方にもこだわって、植物をかっこよく見せようとしました。それまでビカクシダは鉢植えで栽培するのが一般的でした。ところが鉢植えだと、縦方向に伸びるほかの観葉植物の端正な姿に負けてしまうこともあります。葉が下垂するタイプでは、鉢が邪魔をして葉が伸び出しにくく、お世辞にもかっこいいとはいえない。
 一方、コルク板や流木などに着生させて壁に掛けたり支柱に吊るしたりすれば、見違えるほどかっこいい姿になる。もともと原生地では樹木に着生しています。本来の姿で見るのが一番かっこいいと気づいた人たちが、現在のブームを牽引してきたといえます。

玄関ホールに美術作品とともに置かれたビカクシダ(左からグランデ、スーパーバム' ドワーフ' 、ウィリンキ ーの胞子培養からの選抜株)。明るめの玄関ホールでも、1週間ほど楽しんだら通常の栽培環境に戻す。

玄関ホールに美術作品とともに置かれたビカクシダ(左からグランデ、スーパーバム' ドワーフ' 、ウィリンキ ーの胞子培養からの選抜株)。明るめの玄関ホールでも、1週間ほど楽しんだら通常の栽培環境に戻す。

新しい品種が続々と誕生

 コーデックスやアガベ、エケベリアなどの多肉植物との相性もよく、それらと一緒に栽培して楽しむ人も大勢います。ただ、ビカクシダがちょっと特徴的なのは、欧米の人たちはさほど関心を示さず、主にタイや台湾、日本を中心とした東アジアで人気が沸騰しているという点です。
 もともと日本で作出された品種がタイに持ち込まれて人気を集め、現地でブームになりました。それが台湾に渡って人々の目を奪い、そこから新たな品種が生まれて日本に紹介されるというように、互いに影響し合っています。これらの国では優秀なブリーダーが育種に情熱を注いでいるので、今後5年ほどでさらに新しい品種がたくさん出てくるはずです。今まで見たこともないようなビカクシダも誕生するでしょう。とても楽しみで、ワクワクが止まりません。
 ビカクシダは一部の気難しい種類を別にすれば、どれも環境適応性が高く、育てやすい植物です。胞子葉と貯水葉の両方で、多様な姿形を楽しめるのも大きな魅力です。一方で、大きく育てたり、コンパクトに維持したり、育て方一つで自在にコントロールする楽しさがあるのも特長です。
 さらに、鉢植えの観葉植物がフロアの主役だとしたら、ビカクシダは壁面を飾る看板役者といえます。インドアグリーンとして、とても貴重だと思います。まだ育てたことのない人は、ぜひチャレンジしてみてください。

'カイゲン' 。ビフルカツムとウィリンキーの胞子を混ぜて交雑させた胞子培養株からの選抜品種。両親のよい 性質を受け継ぎ、育てやすく強健。

'カイゲン' 。ビフルカツムとウィリンキーの胞子を混ぜて交雑させた胞子培養株からの選抜品種。両親のよい 性質を受け継ぎ、育てやすく強健。

杉山拓巳(すぎやま・たくみ)さん

熱帯植物栽培家。ビカクシダをはじめティランジアやアンスリウム、ホヤなど熱帯植物全般に造詣が深く、生産・育種も手がける。植物の特性を見極め、新しくてよいものを研究し、世に問い続ける植物栽培の匠。「熱帯植物栽培家の気まぐれ塾YouTube版」Instagramのライブも人気。

■撮影 田中雅也
■撮影協力 井上悠理


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