創刊10周年を迎えた「100分de名著ブックス」シリーズは、累計50万部を突破しました。「さらに多くの方に名著の魅力に触れてほしい!」との思いから、毎週月曜日、既刊の名著読み解きを1章まるごと公開します! 今回の名著は孔子の「論語」。「100分de名著ブックス 孔子『論語』」の「はじめに」と「第1章」より、佐久 協先生による読み解きをご紹介します(第7回/全7回)

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第1章 人生で一番大切なこと (その6) 若者への応援歌  それから、ワタシが『論語』を読んで「いいなー」と思うのは、この本がある意味、「若者への応援歌」になっている点です。

 孔子は、自分自身の望みを果たせなかった人です。しかし、それにクサることなく、自らの経験を後進を後押しするのに生かしました。

 とくに晩年はそうです。自分が名声を得ようとか、いばりたいとか、持ち上げてもらおうとか、そういう気持ちはぜんぜんなく、ただひたすら、自分が人生で得たことを弟子に伝えようとしているのです。

 その感じが、以下の言葉ににじみ出ています。
 孔子はちょいと教え魔的な一面があったかもしれません。

 孔子にはたくさん弟子がいましたが、なかでもいちばん愛したのは顔淵(がんえん)(顔回)という弟子で、彼が死んだ時などは、「ああ、天は私を滅ぼした」(先進第十一─九)と、たいへんな嘆きようでした。弟子思いの先生だったんです。

 『論語』というのは、のちの回でも話しますが、どちらかというとビジネス人などにウケる本です。しかし、若者への応援歌という意味では、ワタシは高校生や大学生に、ぜひ読んでもらいたい。
 
 若いうちに読んでおくといい理由は、他にもある。
 
 たとえば、こういう言葉があります。
 一読するとああ分かったという気になるでしょう。
 
 でも、「知る」と「好む」の違いは、まあ分かる。が、「好む」と「楽しむ」はどう違うかとなると、怪しくなってくる。少なくともワタシにはよく分からない。こういう言葉は、“一生モン”の問いなんです。

 『論語』の中には、こんなふうに、どう訳していいか分からないような言葉がいっぱいある。そういう言葉を見つけて、自分なりにこだわって、意味を繰り返し考えてみる。すると、いつか「分かった!」って時がくる。しかし、何年かたつと、「あ、やっぱり違うかな」って思いはじめる。そして、また何年かたつと、また「分かった!」となる。そして、またしばらくすると、「あ、やっぱり違う」と思いはじめる。

 そういうふうに、同じ一つの言葉でも、時をへるにつれて違う意味に感じられる。その感じ方の違いによって、逆に自分自身の成長が分かったりするのです。

 それが、孔子の言葉の含蓄であり、『論語』の大きな魅力の一つなんです。

 ワタシが若いうちに『論語』を一度読んでおくといいと勧めるのは、そういう理由からなんです。

 ですから、とりあえず本を開いて、ぱらぱらと眺めてみてください。そして、一つでも、気になる言葉を見つけられれば、きっと、人生の折々に役立つことは請け合いますよ。
本書の「はじめに」と「第1章」はいかがでしたでしょうか。
以降の読み解きは、ぜひ書籍・電子書籍でご覧ください!


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■『NHK「100分de名著」ブックス 孔子「論語」』(佐久 協 著)より抜粋
■脚注、図版、写真は権利などの関係上、記事から割愛しております。詳しくは書籍をご覧ください。
佐久 協(さく・やすし)
文筆業。1944年東京生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、同大学院で中国文学・国文学を専攻。大学院修了後、慶應義塾高校で教職に就き、国語、漢文、中国語などを教える。同校生徒のアンケートでもっとも人気のある授業をする先生として親しまれてきた。2004年に教職を退き、現在は思想、哲学、漢籍、日本語など幅広いテーマで執筆活動、講演活動を行う。主な著書に『高校生が感動した「論語」』(祥伝社新書)、『世界一やさしい「論語」の授業』(ベスト新書)、監修に『論語が教える人生の知恵』(PHP研究所)、『論語を楽しんで生かす本』(主婦と生活社)などがある。
※著者略歴は全て刊行当時の情報です。
大人の学び直しにおすすめ! NHK「100分de名著」ブックス&「学びのきほん」シリーズの紹介はこちら *『論語』の章句について、書き下し文は現代仮名遣いで表記し、金谷治訳注『論語』(岩波文庫)をもとに一部改変、編集部で適宜ふりがなをふりました。さらに佐久流解釈による現代語訳を並記し、原文は一部旧漢字を残して付しました。

*本書は、「NHK100分de名著」において、2011年5月に放送された「孔子 論語」のテキストを底本として一部加筆・修正し、新たに第4回放送の対談と読書案内、年譜などを収載したものです。
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