2022年度前期『将棋フォーカス』講座の講師・三枚堂達也七段と、聞き手・山口恵梨子女流二段。
 収録の休憩時間に二人がかわしたトークを紹介します。喫茶店でコーヒーや紅茶を飲みながら、お二人の語り口に耳を傾けてはいかがでしょうか。
 今回は自己紹介も兼ねて、お互いのことをあれこれ語っていただきました。
思い出の苺ミルク 三枚堂「山口さんと仲良くなってからだいぶ経ちますよね。初めて会ったのが将棋会館の道場でしたよね。いや、鳩森神社の大会だったかな。とにかく千駄ヶ谷です」

山口「さんちゃんが苺ミルクを飲んでいたころから一緒に将棋を指していたよね。当時のことは今でもよく覚えていて」

三枚堂「パックのジュースの自動販売機が道場の入り口の脇にあって。私の祖父がいつも買ってくれていました」

山口「さんちゃんのおじいちゃんが私の分まで買ってくれたんですよ。さんちゃんには道場でよく指してもらったよね。手合い以外で練習将棋を指してくれる男の子がほとんどいなかったんだけど、さんちゃんはすごく優しくて。女の子の輪にも入ってくれて」

三枚堂「そうなんだ。あまり覚えていないなぁ」

山口「さんちゃんは妹がいるから女の子とも接しやすかったのかな」

三枚堂「おじいちゃんの後押しがあったのかも」

山口「そうかもしれない。一緒に遊び将棋もやったよね」

三枚堂「安南将棋や取るイチ将棋をやったなぁ、いやー、すごく懐かしいですね」

山口「反射角もやったよね」

三枚堂「いろいろなゲーム将棋をやったけど、普通に将棋も指しましたよ」

山口「本当に楽しかった思い出しかなくて」

三枚堂「山口さんは当時、中飛車党でしたね」

山口「父に『これからは中飛車の時代が来る』って言われて近藤先生(正和七段)の本を読んで勉強しました。その前は雁(がん)木を指していたんですが、組んでからどう指せばいいかわからなくて全然勝てませんでした」

三枚堂「雁木は攻め方が難しいからね」

山口「雁木で失敗して63連敗ぐらいして、そこから中飛車を指すようにしました」

三枚堂「63連敗もしてよくイヤにならなかったね」

山口「当時はそういうことを考えずひたすら将棋を指していました。さんちゃんは男女分け隔てなく接してくれる小学生でした」
個性が出るから楽しい 三枚堂「山口さんは子どものころからやっぱり攻め将棋といった印象があるんだけど。最近はちょっと違って、棋風が変わってきたよね」

山口「そうですね。最近はAIの影響もあって受け重視になっているかもしれない」

三枚堂「攻めの鋭さと詰将棋を解く速さが山口将棋の持ち味だったように思います。今はそこに重点はなくなったの?」

山口「攻め将棋の貯金が切れてしまって」

三枚堂「我々の年代は貯金がなくなってくるころだよね。でも安定感は出てきましたよね」

山口「AIの評価も難しいんですけどね。ある局面を調べていたら飛車と桂を交換しろと出てきてびっくりして」

三枚堂「それはかなり特殊な局面だったんでしょう」

山口「さんちゃんは序、中盤がうまくて、勉強をさせていただいています」

三枚堂「そうかな? どちらかと言えば下手なほうよ。やっぱり課題は中盤かな。どう指せばいいかわからなくなることがある。優位を失ってやや悪い状況で終盤に入ることも多くて」

山口「将棋は個性が出るから面白いよね。さんちゃんはバランスを取るのが
めちゃくちゃうまくて。スキを作らないように駒組みをしていて、いつもすごいなと感心しています。まねはできないので、どういう思想でこういった形を指しているんだろうと考えて見ています」

三枚堂「それが現代将棋の難しさでもあるんですが…」

山口「さんちゃんの人柄ですか? ずっと優しい。男女隔たりがなく、ありがたいですし。なので棋士の先生というよりも友だちという感覚が強いです」

三枚堂「山口さんはいつも気配りをされながらちゃんと自分の意見も言えて、すごく芯が通っていますよね」

山口「言い過ぎてしまうこともあって…」

三枚堂「自分にはない個性を持っていていいと思います。あっ、とても優しいです(笑)」

山口「何だかすごくわざとらしくない(苦笑)」

三枚堂「ハハハ。ところで前期の反省ってありますか。私は昨年の夏に体調管理がうまくいかずメンタル面が崩れてしまって。けっこうな課題でした。今期は講師としてしっかりと将棋に向き合うことを心掛けます」

山口「目標の勝率は?」

三枚堂「7割以上勝てるようにすること。まだベスト4まで勝ち進んだことがないのでそれも目標です。消極的かもしれないけど謙虚にいきます」

山口「それ、大事よね。私は勝率を上げることが目標です。前期は相掛かりを一局だけ指したんだけど桂をタダで取られてボロ負けしたのが反省です。それがトラウマになっていて…。視聴者の皆さんといっしょに勉強して、ちゃんと理解を深めてから指してみようと思います」

テキストではこのように学べます 三枚堂達也 七段
(さんまいどう・たつや)
千葉県出身、内藤國雄九段門下。2013年四段、2019年七段。

山口恵梨子 女流二段
(やまぐち・えりこ)
鳥取県出身、堀口弘治七段門下。2008年女流2級、2016年女流二段。

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