実話ベースの生々しい環境問題と健康被害、感情の起伏に伴う素早く、激しいイントネーションに富んだ英語表現、法律用語、アメリカ人の権利意識、社会階層の違う人たちのさまざまな意見と話し言葉、弁護士の「本音と建て前」を鮮やかに切り替える話し方が、たったの90分という時間に詰め込まれていました。
実践! 映画から「生きた英語」を取り込む
ここで、「エリン・ブロコビッチ」を例に、生きた英語を取り込む作業を再現してみましょう。実際のセリフから、セリフに含まれるスピード感、スピーキングにおけるパターンを見つけ出していきます。1.熱意、正義感、まくし立てるスピード感を感じ取る!
See, the thing is, it doesn’t matter whether you win, lose or draw here. What matters is that you were lied to. You’re sick, and your kids are sick because of those lies. If for no other reason, you all have to come together to stand up in a courtroom and say that.
分かる? 要は、ここでは勝とうが負けようが引き分けようが関係ないの。大切なのは、あなたはウソをつかれている(だまされている)っていうことなのよ。あなたはそのウソのせいで病気になっていて、そしてあなたの子どもたちも病気になってるの。この理由だけでも、あなたたちは一致団結して法廷に立ってこのことを証言しないといけないのよ。
難しい言葉はありませんが、シンプルな言葉ですごい速さと勢いでまくし立てていることが分かります。環境問題の被害者の人たちに対して一生懸命力になろうとしている主人公の気持ちが伝わってくることを感じ取りましょう。これはふだんの英語学習ではなかなか出会えない経験と言えるのではないでしょうか?2.情報量の多い会話体に挑戦!
He wanted you to know the legal limit for hexavalent chromium, is .05 parts per million. And that at the rate you mentioned, .58, it could be responsible for the cancers in that family you asked about. The Irvings.
彼は君に六価クロムの法的基準値は100万分の0.05ということを伝えたかったんだ。そして君が言った比率は0.58で、君が知りたがっていた家族がかかった癌の原因となっているかもしれない。アービングさん一家のね。
この短い文の中に含まれる情報は非常に多いことが分かります。「六価クロム」という専門用語は、ふだんの英語学習とはかけ離れた専門領域に英語で踏み込むドキドキ感を与えてくれます。「.05」「.58」という数値は、「聞き逃してはならない」という緊張感を英語で味わえます。
“THE RATE you mentioned(君が言った比率)”、“THAT FAMILY you asked about(君が知りたがっていた家族)”。これらの表現は、日本語とは正反対の英語の語順(名詞が修飾部分より先に来る)というスピーキングの根幹となるパターンに慣れるための音読練習ができる貴重な表現ですね。そして、“responsible” と聞けば反射的に「責任がある」と応じてしまうかもしれませんが、実際には(特に理系の内容では)「~の原因である」という訳語が適切な場合が多いということを知ることができます。真理はたった90 分の中にある!
最初は内容をしっかり把握するため、精読。その後は、映画を見てはスクリプトに目を通し、最後は斜め読みができるようになり、「聞くことと読むこと」が同じように感じられるようになります。「音声練習+話し言葉のインプット=リスニング力&自在な発話力」が、ここで実現するのです。
同時通訳者(JAL/日本航空ほか)。翻訳家。関西外国語大学外国語学部スペイン語学科卒。20代半ばから日本国内で英語を独学。武道、格闘技経験を活かし、外国人向けのナイトクラブのバウンサー(用心棒)の職を経たのちに通訳キャリアをスタートし、多数の大手企業で通訳を担当する。以来、同時通訳者として、米国メリーランド州環境庁、IATA(国際航空運送協会)、AAPA(アジア太平洋航空協会)、元アメリカ陸軍工兵隊最高幹部ジェームズ・F・ジョンソン博士および元アメリカ開墾局研究者デビッド・L・ウェグナー氏の通訳担当、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)関連シンポジウム等における通訳を歴任し現在に至る。英語講師として、楽天本社、日経ビジネススクール、学びエイドほか多数。三重・海星中/高等学校・英語科特別顧問。武蔵野学院大学・元実務家教員。パワー音読(POD)🄬開発者。NHKテキスト「英会話タイムトライアル」連載、英字新聞The Japan Times Alpha紙連載など、執筆多数。英検1級。ICEE総合優勝2回。英語発音テストEPT100(満点:指導者レベル)。Twitterで魅力的な英語表現や学習法を発信中!
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