
自炊料理家・山口祐加さんの「料理に心が動いた時」
自炊料理家として多方面で活躍中の山口祐加さんが、日々疑問に思っていることや、料理や他者との関わりの中でふと気づいたことや発見したことなどを、飾らず、そのままに綴ったエッセイ「自炊の風景」。
山口さんが自炊の片鱗に触れ、「料理に心が動いた時」はどんな瞬間か。世界中の「日常のごはん」を求めて海外を旅している山口さんが次に訪ねたのはポルトガル。そこではどんな体験や発見、出会いがあったのでしょうか。
※NHK出版公式note「本がひらく」より。「本がひらく」では連載最新回を公開中。
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敵にレシピは教えないでしょう?
「敵にレシピは教えないでしょう?」
ポルトガルで料理を教わったクリスティーナさんの言葉が、今でも心に残っています。私の人生の道がパッと照らされたような、一言でした。
2024年6月、世界の自炊をめぐる旅の3か国目にポルトガルを訪れました。ポルトガルはヨーロッパの中でも最もお米と海産物を消費する国であり、シンプルな家庭料理をベースにしたポルトガル料理は日本人の舌に合うことでも知られています。ポルトガルには3週間滞在し、その最後の数日間を首都・リスボンで過ごしました。
ポルトガルで日本人向けにツアーコーディネーターのお仕事をされている東裕子(ひがしゆうこ)さんの紹介で出会ったのは、クリスティーナ・カステル・ブランコさん。私は「南蛮漬け、天ぷら、カステラの元になったお料理を紹介してくれる女性がいます」という裕子さんからの情報だけで彼女の家を訪れました。玄関を開けると彼女は浴衣で私を出迎えてくださり、私は目を丸くしました。話を聞き始めて分かったのは、彼女はポルトガルで著名なランドスケープデザイナーであること。東京の大学でもランドスケープデザインを教えた経験があり、日本で何度も講演をするなど、日本の文化や歴史について詳しく、日本の食文化も大好きとのことでした。まだ何も教わっていないのに、彼女と出会えただけで嬉しかったことを覚えています。

クリスティーナさんは和服がよく似合っていた